本書は、現役血液内科医師として、日々多くの患者さんの治療に従事している医師によるエッセイである。
血液疾患の治療は近年目覚ましい向上を遂げているが、まだまだ難治の疾患だ。治療は厳しい。
治療の副作用や再発に怯える患者さんや御家族とともに歩む医師や看護師達。
医療崩壊が社会問題となっている昨今、厳しい医療現場において、医療者も患者さんと伴に葛藤していることが分かる。
「病気をやっつけよう」と必死で格闘する著者の姿が浮かぶ。今この現在も、日本の医療は現場のこうした多くの個人の献身によって支えられているのだ。
医療不信が広がる世の中において、「患者さんから人生について多くを学ぶことがある」という筆者の言葉は温かい。患者と医師というつながりを越えた、人間としての信頼関係こそ今の医療に必要とされているものであろう。
本書は、患者さんや御家族の方々のみならず、今後医療を志そうとしている人々にも是非読んでいただきたい。
前書きより抜粋
『・・・一般病院で治療に当たっていても、次々と新しい治療薬の情報が入ってきます。20年いや10年後の医療は想像できないほど進歩したものになっているのではないかと期待させられてしまいます。
それでも、まだ全員の方の病気が治るわけではありません。
病気が治って笑顔で退院されていく患者さんの傍らで、より多くの患者さんが新しい治療法が開発されるのを待ちながら、今日も治療の副作用や病気の症状と闘い苦しんでいるかもしれません。
不安に押しつぶされそうになりながら、寝られぬ夜を過ごしている患者さん。
そんな患者さんを必死で支えている御家族の方々。この本はそうした多くの方々との触れ合いの毎日から生まれました。
人間は誰しも病や寿命から逃れることはできません。
医師として、命が産まれて消えていく病院に身を置くことで、学ばせて頂くことはたくさんあります。
人生は有限であること、命がいかにはかないものであるかということ。
同時に命がどんなに力強く、素晴らしいものであるかということ。
私は医師となり、多くの患者さんや御家族と触れ合う中で、私自身の人生において大事な数々の教えを学ぶことができたと思います・・・。』
内容
白血病患者Aさんの闘病
2回の造血幹細胞移植を乗り越えたTさんの闘病
特発性血小板減少性紫斑病:Oさんの場合
急性心筋炎:Yさんの場合・パニック障害:Sさんの苦悩
20年後に再発した悪性リンパ腫: Mさんの場合
多発性骨髄腫:血液透析を受けながら (Fさんの場合)
慢性骨髄性白血病:Uさんの場合
リウマチ性多発筋痛症:Jさんの体験
成人T細胞白血病・リンパ腫:I さんの闘病
患者さんに許してもらうということ
中枢神経原発悪性リンパ腫: 治った認知症(Gさんの場合)
血管内悪性リンパ腫 (IVL): この不思議な病気 (Mさんの無念)
産科的DIC: 母となった直後に帰らぬ人となったEさんの妻
急性前骨髄球性白血病:油断大敵(Hさんの場合)
薬剤性白血球減少症:慢性関節リウマチ治療の落とし穴(Dさんの経験)
恩師の死
未受精卵保存:移植を前に下したSさんの決断
移植患者さんの苦悩:精神的サポートの必要性
伝染性単核球症:キス病
年末年始の病院:舞台裏で支える人々
便秘を侮らないで: 貧血で大腸癌を早期発見できなかったKさん
大人のリンゴ病に御注意を
骨髄移植:ドナーさんのこと
恐ろしい虫歯:移植・抗癌剤治療前の歯科治療の重要性
ピルカウント:患者さんとの共同作業
健康食品・サプリメント:抗癌剤治療上の問題
怖い味噌や生ビール:化学療法中の食事制限
自家末梢血幹細胞移植:悪性リンパ腫のMさんの場合
肥満大敵: 抗癌剤治療の障害
移植に向かう心の準備
移植とペット
あとがき